最高のロックであるドロスグロップの評判

カオティックでありながら、どこかポップでキャッチーなサウンドを発するアメリカ・ニューヨークのエクスペリメンタルロックバンド・バトルス(BATTLES)。このバンドを形成するメンバーは、いずれもアメリカのポストロック・オルタナティブロックのシーンで活躍していたメンバーが集結したものです。

 

すでにそれぞれに実力と経験を有したメンバーが奏でる音は、今までにはなかった新たな風として音楽ファンに受け入れられました。

 

そして、メンバーの1人であったタイヨンダイ・ブラクストンが脱退してから激しい葛藤と1からの音楽の再構築を経て出来上がったアルバム「グロスドロップ」。それから1年の時を経た2012年に、このアルバムに収録された曲を、バンドにゆかりの深いアーティストたちによりリミキシングした「ドロスグロップ」のリリースに至りました。

 

これは、オリジナルである「グロスドロップ」を、気鋭のアーティストたちに再構築される形として行われたプロジェクトであり、そのタイトルもオリジナルをもじったもの、ジャケットデザインもオリジナルのモチーフにカラフルな色をかけているというもので、「ドロスグロップ」のコンセプトをそのまま表したアートワークとなっています。

 

この「ドロスグロップ」がアルバムとしてリリースされたのは2012年4月11日。CDアルバムの形としては日本先行発売でしたが、このリリース前にアナログ盤LPの形で4枚に分けて本国アメリカでリリースされています。

 

「ドロスグロップ」はバトルスのメンバー自らがリワークしたものであり、それぞれの曲に新たな風を吹き込んだリマスターたちも全てメンバー自ら選出しています。もともとオリジナルの「グロスドロップ」は、メンバー脱退後の混沌とした中で模索しながら製作されたものであり、音楽として多方面に抜けた感じはあったにしても、形として安定していないような危うい成り立ちの印象も受けるものでした。

 

それが逆に形式にはまらないバトルスの色として生きてきたのですが、このリミックス盤ではさらにその危うさをクローズアップして増幅させたような仕上がりで評判となっています。

 

彼らに近い位置にいるリミキサーたちだからこそ、危うさや歪みのようなものをバトルスの色として感じ取ったのかもしれません。そこを最大限に生かすことが、オリジナル「グロスドロップ」の魅力をさらに引き出すような形になっています。

 

ただ形を変えたのではなく、見るべきもの、引き出すべきものをそれぞれの形で体現した楽曲がそろっているからこそ、「ドロスグロップ」は「グロスドロップ」の鏡となり、このリミックス盤が「バトルスの美学」と言われるものとなっているのです。