2002年にアメリカ・ニューヨークで結成されたロックバンド・バトルス(BATTLES)。そのメンバーは、デイヴ・コノプカ・イアン・ウィリアムス・ジョン・ステイナー・タイヨンダイ・ブラクストンの4名でした。
それぞれにポストロック・ポストハードコア・メタルロックなどの分野で活躍していたメンバーが一堂に会したこのバンドは、そのメンバーだけでも話題には事欠かず、順調に活動を続けた後2004年にファーストシングル「TONTO」をリリースし、評判となりました。
それ以降、独自の音楽スタイルと経験・実力に裏打ちされたサウンドの融合で音楽ファンの心をつかんでいき、2007年リリースのアルバム先行シングル「ATLAS」と、その楽曲が収録された「MIRRORED」で一躍第一線に躍り出ます。
本国・アメリカで火が付いて以降、日本の音楽ファンの心も確実に刺激し、熱い支持を得るまでになりました。
この間、当初から実験的な音作りではあったものの、初期にはプログレ色が濃いものであったり、エレクトロを多用したテクノ要素も取り入れていたりとさまざまなテイストを散りばめたものでした。楽器それぞれのパートにおいて均整の取れた音を奏でており、カオティックでありながらミニマルな作りの楽曲が並びました。
この枠にとらわれないサウンド構成が音楽ファンの支持を得た要因の1つでもあります。
そんなバトルスに大きな転機が訪れたのが2010年。アルバム「グロスドロップ」を製作していた過程でそれは起こりました。その当時のことをメンバーたちが語っています。
今までインスト中心で音とリズムをクローズアップした楽曲を製作していた流れから、メンバーのタイヨンダイ・ブラクストンから、「グロスドロップ」に収録する曲全てにボーカルを入れたいという提案があったのだそうです。
その意見自体は否定されるものではなく、その方向で楽曲作りが進められていましたが、結果、提案者のタイヨンダイにとってもメンバーにとっても納得のいく作品には仕上がらなかったとのこと。このことからタイヨンダイに心境の変化が起きてしまった結果、脱退という道を選ばざるを得なかったのです。
その後、残された3人で奏でるバンドサウンドということで楽曲の新たな構築を始めました。突き詰めていった結果、従来はさまざまな音を重ねて窮屈だったところから解き放たれたと言います。
さらに、ゲストボーカルを国内外から迎え、ゲイリー・ニューマンやボアダムスの山塚アイらが参加しています。これにより、多様で開放的なアルバムを目指すものとなりました。メンバー自らこのアルバムに「美しさ」があると言わしめたのは、純粋な3ピースとしての強さを手に入れながら多方面からの風との融合を成功させたという点にあります。
そして2012年、この強くて美しいアルバムにさらなるアレンジを加えて、新たな美学を追求していったのが、「グロスドロップ」のリミックス盤「ドロスグロップ」です。