実験的なサウンドを発し音楽ファンを魅了して評判を呼んでいるバトルスの最新アルバム「グロスドロップ」を全曲リミックスした「ドロスグロップ」。このアルバムは、日本で先行リリースされたCD盤の前に4枚にわたって12インチアナログ盤としてアメリカでリリースされています。
その4枚を、それぞれ携わったリミキサーを中心に見ていきます。
まず、第一弾として2012年2月8日にリリースされた「ドロスグロップ1」。この作品に納められているのは2曲で、「Wall Street」と「Sweetie & Shag」をリミックスしたものがそれぞれ納められています。「Wall Street」のリミックスを手掛けたのはブラジル出身のDJガイ・ボラット、「Sweetie & Shag」はスウェーデンのテクノミュージシャンであるザ・フィールドです。
それぞれテクノやエレクトロニカサウンドを駆使しながら、独自の音楽スタイルを確立しているアーティストであり、バトルスサウンドと見事な融合を果たしています。では、このリミキサーたちはどのようなミュージシャンなのでしょうか。
■ガイ・ボラット
ブラジルはサンパウロ出身のDJ。自ら楽曲をプレイするだけではなく、プロデュース活動も積極的に行い、また一方で建築家としての一面も持つ異色ミュージシャンです。国際的に有名な音楽レーベルのプロデューサーも務め、現在でも本国ブラジルでレーベルの活動に携わっています。作曲活動も活発に行っており、アルバムが2014年現在までに2枚がリリースされています。
淡々とループする音ながらそれぞれの要素が心地よく、音数が少ないだけに広がりを感じさせるような音作りを行うアーティストです。
来日してそのサウンドを聴かせてくれる機会はあまりありませんが、各国から注目を浴びています。
■ザ・フィールド
バンド名のように聞こえるネーミングですが、アクセル・ウィルナー個人のプロジェクト名です。スウェーデン・ストックホルム出身で、規則的にループするテクノサウンドでありながらミニマルな構成で、ピコピコした電子音ではなくナチュラルな質感を醸し出しています。
テクノとエクスペリメンスを仕切ることなく展開する姿勢からバトルスとも交流を持っており、「ドロスグロップ」に参加することとなりました。以降、バンド形態としてさらなる挑戦を続けテクノにロッククテイストなどさまざまなテイストを織り交ぜ、数々の試みで幅を広げています。
日本ではフジロックフェスに2012年に参加し、日本の音楽ファンを湧かせました。2013年には再びソロでの音楽構築を始動させ、アルバムをリリースしています。
カオティックでありながら、どこかポップでキャッチーなサウンドを発するアメリカ・ニューヨークのエクスペリメンタルロックバンド・バトルス(BATTLES)。このバンドを形成するメンバーは、いずれもアメリカのポストロック・オルタナティブロックのシーンで活躍していたメンバーが集結したものです。
すでにそれぞれに実力と経験を有したメンバーが奏でる音は、今までにはなかった新たな風として音楽ファンに受け入れられました。
そして、メンバーの1人であったタイヨンダイ・ブラクストンが脱退してから激しい葛藤と1からの音楽の再構築を経て出来上がったアルバム「グロスドロップ」。それから1年の時を経た2012年に、このアルバムに収録された曲を、バンドにゆかりの深いアーティストたちによりリミキシングした「ドロスグロップ」のリリースに至りました。
これは、オリジナルである「グロスドロップ」を、気鋭のアーティストたちに再構築される形として行われたプロジェクトであり、そのタイトルもオリジナルをもじったもの、ジャケットデザインもオリジナルのモチーフにカラフルな色をかけているというもので、「ドロスグロップ」のコンセプトをそのまま表したアートワークとなっています。
この「ドロスグロップ」がアルバムとしてリリースされたのは2012年4月11日。CDアルバムの形としては日本先行発売でしたが、このリリース前にアナログ盤LPの形で4枚に分けて本国アメリカでリリースされています。
「ドロスグロップ」はバトルスのメンバー自らがリワークしたものであり、それぞれの曲に新たな風を吹き込んだリマスターたちも全てメンバー自ら選出しています。もともとオリジナルの「グロスドロップ」は、メンバー脱退後の混沌とした中で模索しながら製作されたものであり、音楽として多方面に抜けた感じはあったにしても、形として安定していないような危うい成り立ちの印象も受けるものでした。
それが逆に形式にはまらないバトルスの色として生きてきたのですが、このリミックス盤ではさらにその危うさをクローズアップして増幅させたような仕上がりで評判となっています。
彼らに近い位置にいるリミキサーたちだからこそ、危うさや歪みのようなものをバトルスの色として感じ取ったのかもしれません。そこを最大限に生かすことが、オリジナル「グロスドロップ」の魅力をさらに引き出すような形になっています。
ただ形を変えたのではなく、見るべきもの、引き出すべきものをそれぞれの形で体現した楽曲がそろっているからこそ、「ドロスグロップ」は「グロスドロップ」の鏡となり、このリミックス盤が「バトルスの美学」と言われるものとなっているのです。
2002年にアメリカ・ニューヨークで結成されたロックバンド・バトルス(BATTLES)。そのメンバーは、デイヴ・コノプカ・イアン・ウィリアムス・ジョン・ステイナー・タイヨンダイ・ブラクストンの4名でした。
それぞれにポストロック・ポストハードコア・メタルロックなどの分野で活躍していたメンバーが一堂に会したこのバンドは、そのメンバーだけでも話題には事欠かず、順調に活動を続けた後2004年にファーストシングル「TONTO」をリリースし、評判となりました。
それ以降、独自の音楽スタイルと経験・実力に裏打ちされたサウンドの融合で音楽ファンの心をつかんでいき、2007年リリースのアルバム先行シングル「ATLAS」と、その楽曲が収録された「MIRRORED」で一躍第一線に躍り出ます。
本国・アメリカで火が付いて以降、日本の音楽ファンの心も確実に刺激し、熱い支持を得るまでになりました。
この間、当初から実験的な音作りではあったものの、初期にはプログレ色が濃いものであったり、エレクトロを多用したテクノ要素も取り入れていたりとさまざまなテイストを散りばめたものでした。楽器それぞれのパートにおいて均整の取れた音を奏でており、カオティックでありながらミニマルな作りの楽曲が並びました。
この枠にとらわれないサウンド構成が音楽ファンの支持を得た要因の1つでもあります。
そんなバトルスに大きな転機が訪れたのが2010年。アルバム「グロスドロップ」を製作していた過程でそれは起こりました。その当時のことをメンバーたちが語っています。
今までインスト中心で音とリズムをクローズアップした楽曲を製作していた流れから、メンバーのタイヨンダイ・ブラクストンから、「グロスドロップ」に収録する曲全てにボーカルを入れたいという提案があったのだそうです。
その意見自体は否定されるものではなく、その方向で楽曲作りが進められていましたが、結果、提案者のタイヨンダイにとってもメンバーにとっても納得のいく作品には仕上がらなかったとのこと。このことからタイヨンダイに心境の変化が起きてしまった結果、脱退という道を選ばざるを得なかったのです。
その後、残された3人で奏でるバンドサウンドということで楽曲の新たな構築を始めました。突き詰めていった結果、従来はさまざまな音を重ねて窮屈だったところから解き放たれたと言います。
さらに、ゲストボーカルを国内外から迎え、ゲイリー・ニューマンやボアダムスの山塚アイらが参加しています。これにより、多様で開放的なアルバムを目指すものとなりました。メンバー自らこのアルバムに「美しさ」があると言わしめたのは、純粋な3ピースとしての強さを手に入れながら多方面からの風との融合を成功させたという点にあります。
そして2012年、この強くて美しいアルバムにさらなるアレンジを加えて、新たな美学を追求していったのが、「グロスドロップ」のリミックス盤「ドロスグロップ」です。
アメリカ・ニューヨーク発信でその規格外のサウンド展開で注目を集めているバトルス(BATTLES)。2004年にシングル「TRAS」でデビュー以降、もともとポストロックやメタルロックなど前衛音楽の系統を引き継ぐメンバーが集まって結成されたこのバンドの奏でる挑戦的な音は、各方面において評判を呼びました。
これまでにリリースしたシングル盤は3枚、EP盤は5枚、そしてアルバム盤は最新のリミックスアルバム「ドロスグロップ」を含めて3枚。順調にリリースを続けているようにも見えます。
しかし、この経緯の間には、2010年のタイヨンダイ・ブラクストンの脱退といった大事件も経ています。それでも、ポストロックやメタルロック、ポストハードコアといった前衛的かつ否定的な音楽ではなく、あくまで新しいジャンルを切り拓こうという姿勢を一貫して持ち続けて音楽を提供し続けているのがバトルスの気概です。
では、2004年のファーストシングルから主にどのような変遷をたどってきたのかを見ていきましょう。
■「TRAS」(2004年・シングル)
バトルスのファーシトシングル。ループする一定のベースラインにギターやエレクトロも含めたさまざまな音が乗っていく展開ですが、実験的にセッションのような形で進んでいくのが印象的な曲です。
■「EP C」(2004年・EP)
こちらも、それぞれの音は淡々と進みながらそれらの音の融合で不思議な重厚感が生まれているほか、エレクトロにポリリズムの不思議な感覚に引き込まれます。
■「B EP」(2004年・EP)
前作より多少ポップなテイストも取り入れながら、わかりやすい曲構成ではないからこそ引き立つ音のクオリティ、淡々と刻み続けられるドラム音が心地よく、また攻撃的です。
■「ATLAS」(2007年・シングル)
日本でも一躍バトルスの名を知らしめたシングル。ポストロックやテクノに傾倒していた彼らが「再びロックに戻ってきたらどうなるか」と当時語っていたように、エレクトロのループとギター・ドラムのハードな音の融合を実験した1曲です。
■「MIRRORED」(2007年・アルバム)
「ATLAS」や「TONTO」などシングルカットされた曲収録されたファーストフルアルバム。従来より多用していたポリリズムなどの特殊な手法を封印した代わりに、タイヨンダイのボーカルを解禁するなど新たな挑戦を行ったアルバムです。
■「TONTO+」(2007年・EP)
アルバム「MIRRORED」からのシングルカット。原曲のほか、リミックスバージョン3曲などが収録されています。
■「GLOSS DROP」(2011年・アルバム)
タイヨンダイ脱退後初のフルアルバム。新たなバンドの方向性を模索しながら完成した本作は、以前のプログレ的な要素を抑えたイメージで、よりポップでキャッチーな音が積極的に取り入れられています。
■「DROSS GLOP」(2012年・アルバム)
上記の「グロスドロップ」のリミックス盤で「ドロスグロップ」。メンバー自らがリミキサーを人選し、彼らにゆかりの深いハドソン・モホークやギャング・ギャング・ダンスのブライアン・デグロウなどそうそうたるメンバーを迎えた豪華版となっています。
2002年、アメリカ・ニューヨークにて4人組のロックバンドが誕生しました。バトルス(BATTLES)というバンド名でデビューしたそのバンドは、形式にとらわれない自由な形の音楽を奏で、今までの音楽の形式や概念の垣根を越えた音を鳴らし、評判を呼びました。2004年にシングル盤「TRAS」そしてEP盤「EP C」、「B EP」を立て続けにリリースし、その予測不能の曲構成とロックの概念を打ち砕く音造りでオーディエンスを惹きつけました。
バトルスが奏でる音楽は、エクスペリメンタルロック、つまり実験音楽・不確定性の音楽という位置づけとされていますが、一方ではポスト・ハードコアの様相も呈していると見る向きもあり、枠にこだわらない彼らの音楽性が見て取れます。
メンバーは、ギター・ベース・エフェクトの デイヴ・コノプカ、ギター・キーボードのイアン・ウィリアムス、ドラムのジョン・ステニアーの3名。しかし、実は2010年までボーカル・ギター・キーボードのメンバーとしてタイヨンダイ・ブラクストンも在籍していました。
彼らはいずれも、2002年のバトルス結成以前からハードコアやポスト・ロック界の第一線で活躍していたメンバーばかり。デイヴは元リンクス、イアンは元ドン・キャバレロやストーム&ストレス、ジョンは元ヘルメットやトマホークにそれぞれ在籍して活躍しており、脱退したタイヨンダイはフリージャズ界に名を轟かせていたアンソニー・ブラクストンの子息というサラブレッド。
このような実力派の4人が奏でる音は、混沌としていながらも無駄がなく、キッチュなメロディやポップな音使いで高い評価を得ています。
2007年にアルバムからのシングルカットとしてリリースした「ATLAS」が日本でも高い評価を得たことを受け、同年には国内外のアーティストが集結するフジロックフェス出演と日本ツアー、2009年にはレイヴサウンドの祭典・エレクトラグライド、そして2011年にはフジロックフェスを始め、世界数ヵ所で開催されるエレクトロサウンドフェス・SonarSound Tokyoに立て続けに出演、併せて日本ツアーを行うなど積極的に来日公演も行っています。
一方、バンドの要であったタイヨンダイが2010年に脱退したことにより、残された3人は新たな位置からの音楽の構築、またバンド自体の立て直しを強いられました。そんな混沌とした中で2011年にリリースされたアルバムが「グロスドロップ」。メンバーを1人欠いたことで迷走をしながら造り上げたアルバムだと言いますが、2012年、その迷走を振り払うかのように、新たな道を切り開くようにアルバム曲全てのリミックス盤としてリリースしたのが「ドロスグロップ」です。
傑作と評判だった「グロス・ドロップ」を再構築したリミックス・ドロスグロップ。それらを作っているバトルスは、日本においてもファンの多いグループです。バトルスのメンバーはイアン・ウィリアムス、デイヴ・コノプカ、ジョン・ステイナーの3人。
かつてはフリー・ジャズ界の巨匠であるアンソニー・ブランクストンを父に持つタイヨンダイ・ブランクストンがいましたが、2009年に退団しています。コネティカットとカリフォルニアの北部で幼少時代を過ごしたタイヨンダイ・ブランクストンが作曲やパフォーマンスを始めたのは90年代からです。2009年には初のオーケストラ・アルバム「Central Market」を発表。
ニューヨークのリンカーン・センターにおいてプレミアム公演を行っています。ビヨークやフィリップ・グラスとのコラボレーションなどの経歴を持ちます。
イアン・ウィリアムスは、元ドン・キャバレロというポストロックバンドにいました。1993年夏から2000年にかけて、5枚のアルバムを発表。2000年11月に一時解散したものの、ドラマーのDamon Cheが再結成。その後2枚のアルバムを発表しています。
革新的で独創的な音楽性を持つバンドと言われていました。イアンが在籍していたのは、1992年から2000年まで。ギター担当でした。デイヴ・コノプカは元リンクスのメンバーの一人。ポスト・ロック系のギタリストです。
ジョン・ステイナーは元ヘルメットのメンバーでした。ヘルメットはアメリカ合衆国ニューヨークで1989年に結成された、オリタナティヴ・メタルバンドです。ボーカルとギターを担当するペイジ・ハミルトンによって結成されました、メンバーチェンジも多く、ペイジが唯一のコンスタントメンバーです。1998年に解散しましたが、2004年から活動を開始しています。元メンバーには、クリス・トレイナー、フランク・ベロ、ジミー・トンプソンなどがいます。
2002年に結成したバトルスは2007年WARPから1stアルバム「ミラード」をリリース。2010年にタイヨンが脱退した後、2011年2st明日バム「グロス・ドロップ」をリリース。日本には2005年PREFUSE73のツアー、2007年フジロック・ツアー、2009年エレクロラグライド、2011年SonarSound Tokyo・フジロック・ツアー公演において来日しています。
バトルスは正統派バンドとして知られていますが、フレキシブルな音楽性はファンを常に驚かせています。「グロス・ドロップ」制作にあたっては、メンバーが3人になって初めてのアルバムづくりで苦労はあったと言っていますが、3人がそれぞれ自分の作りたいものを作る、と決めてできたもので結果いいものができた、と言っています。
ドロスグロップはメンバー自身にとってディレクションされている作品です。前作のジャケットのオブジェを鮮やかな色に変えた、というアートワークもユニークな作品です。特に哀愁感たっぷりの「DOMIMICAN FADE」や「SUNDOME」などが高い評判を得ています。
完成度の高い作品と言われているのも、メンバー自らが選んだリミキサーたちが逸材であることが理由の一つです。ギャング・ギャング・産す、ハドソン・モホーク、フィールド、コード9、ギ・ボラット、ヤマンタカ・アイなど気鋭のクリエイターが大集結しています。それゆえに、「もう一つのグロス・ドロップ」と言われています。
その一人であるハドソン・モホークはイギリス・スコットランド出身のDJ、エレクトロニック・ミュージシャンでありプロデューサーでもあります。DMCという、DJの技術を競う世界大会において、14歳で英国大会のファイナリストとなったという逸材。そこからすでに注目されている人材で、ワープ・レコードの次代を担う、と言われています。
プレイステーションでビートを作り始めたのがわずか12歳。フライング・ロータスを中心としたロサンゼルスのビート・シーンと共鳴するビート・ジャンキーとしても有名で、ヒップホップとレイヴスタイルを合わせたDJ・ターンテーブリストとしての技術も高いです。
傍らでは、ケリー・オケレケのソロ作品ではプリデューサーを務めるという多才なクリエイターです。2009年に「POLYFOLK DANCE 」、デビューアルバム「BUTTER」をリリース。2009年には初来日。レーベル名とのClarkのサポート・アクトとして来日しました。2010年には様ソニックに出演しています。
ギャング・ギャング・ダンスは、2000年代初頭に結成されました。2003年に「Revival of The Shittest 」をCD- Rで自主リリースした後、2004年にセルフタイトルのフルアルバムを発売。2005年にはセカンドアルバムを発売し、2006年には初来日。その後も休みなく作品をリリース。メンバーが手掛ける映像作品と、オーディオ・コラージュは評判の高い作品です。
日本においても熱狂的なファンが多く、2008年に行われたアルバム・リリース・ツアーにおいては、6都市7公演で大成功を収めています。2009年にはコーチェラ・フェスに出演しています。
2010年には日本を除いた全世界で4ADとアルバム契約を結んでいます。エレクトロニック・ビートが冴え渡、パーカッションや女性ヴォーカルの織り成す音楽は、ポリリズミックで魅力的。ユニークで革新的なグループ。この世のものとは思えない、などと絶賛されているグループです。
ドロスグロップは、バトルスの元メンバーだったタイヨンダイ・ブランクストンが脱退した後、混乱しながらも完成させた、バトルスの傑作と評判の「グロス・ドロップ」のリミックス盤です。グロス・ドロップというオリジナルのタイトルをもじって命名されたドロップグロス。
ユーモアがあるのは名前だけではなく、デイヴ・コノプカのアートワークも評判となっています。ドロスグロップは、ハドソン・モホーク、ギャング・ギャング・ダンス、ヤマンタカ・アイ、フィールドやコード9、ギ・ボラットなどの有名なアーティストが参加。作品の質を高めています。単なるリミックス盤ではなく、もう一つの「グロス・ドロップ」と言われるのは、それが理由です。
バトルスのメンバーがそれぞれのアーティストたちを選んだ理由には、次のようなことがあります。サイレント・サーヴァントは、ロサンジェルスのミネアポリス出身。本名をジョン・ユアン・メンデスと言います。西海岸で活躍してきたアーティスト。
午後9時のベルグハイムのような宗教的な洞察に満ち溢れたサウンド、が欲しかったと言われています。カンディング・レイについては、ダークでアトモスティックな感触がその理由。大きなクラブにおいても、巨大で不気味に響く感覚をリミックスに欲しかったと言われています。デイブ・コノプカは長いクラスターのファンでした。
そのため、クラスターが自分たちのリミックスに興味を持ってくれたことに感動したと言っています。彼らがリミックスに参加してくれるのは、身の縮まる思いだったとか。クラスターは、バトルスのインスピレーションの源、とデイブ・コノプカは言っています。
デイブ・コノプカが絶賛するクラスターは、ローデリウスとメビウスによる、エレクトロニクス・デュオです。淡いメロディのローデリウスと、絶対的なメビウスのストレンジサウンドが絶妙に融合した独自の音楽を奏でます。
一部では電子音楽のオリジネーターと言われ、多くのミュージシャンからリスペクトされる存在です。ローデリウスとメビウスは、ベルリンの前衛アートクラブで知り合ったと言われています。ローデリウスの淡いメロディは、アンビエントの父と呼ばれ、メビウスのストレンジサウンドは、ストレンジ・エレクトロニクスの父と呼ばれています。ブライアン・イーノもクラスターと彼らの音楽に共感した一人。バトルスのデイブが憧れ、ドロスグロップに参加してくれたことは、とても大きな喜びになるのが分かります。
ドロップグロスはもう一つの「グロス・ドロップ」と言われています。グロス・ドロップはバトルスの大傑作と評判の作品。もとバトルスメンバーだったタイヨンダイ・ブランクストンが脱退した後作られた作品で、バトルスがとても混乱している中で完成させたものです。
その制作過程において、現在のバトルスのメンバーである、デイブ・コノプカ、イアン・ウィリアムス、ジョン・ステニアーの3人の絆がしっかりと結びつくまでの、過渡期において作られた作品だと言われています。
そのため、作品には不安感や喪失感などが感じられ、それも作品の魅力の一つとなっています。ダイナミックさ、繊細さ、破天荒な色が惜しみなく表現されています。それぞれのミュージシャンの個性も格段に洗練され、作品の中にしっかりと現れています。
グロスドロップには、ゲイリー・ニューマンがボーカルとして参加しています。ゲイリー・ニューマンはイギリスのミュージシャンで、「Cars」がヒットしたことで知られています。1976年に「チューブウェイ・アーミー」というバンドを結成。アルバム2枚を発売しましたが、1979年に解散しています。同じ年の8月にシングル「カーズ」を発売し、全米で1位、全米で3位に。
その後もヒット曲を発売し、名前を知られるようになります。音楽も変化し、ピアノを取り入れたり、生ドラムからリズム・ボックス、リンドラムなどを導入したりすることで、サウンドも変わっていきます。
ゲイリーは1年から数年に1枚というペースでアルバムをリリースしています。マリリン・マンソンがゲイリーの曲をカバーするなど、多くのアーティストに影響を与えているミュージシャンです。自分の師匠はジョン・フォックスと言っています。
ドロスグロップはバトルスの美学であるグロス・ドロップをバンドのメンバー自ら選び抜いた気鋭のクリエイターたちが集結し、再構築してできたリミックス・プロジェクトドロスグロップシリーズの第3弾です。
もう一つのグロス・ドロップであるこのプロジェクトは、ハドソン・ホーク、ギャング・ギャング・ダンス、フィールド、コード9といったアーティストが参加しています。日本先行発売となったCD盤ドロスグロップには、2曲のロングバージョンがダウンロードできるカードが封入されているという特典があります、その他、メンバーの意向にとって、高音質WAVファイル限定での配信も用意されています。時代を代表するアーティストがそろい、バトルスの美学がギュッと凝縮された作品です。
ダイナミックでありながら、緻密なビートとリズムが評判の超絶と言われるロック・バンド、バトルスが完成させたリミックス盤「ドロスグロップ」。最新作のリリースから約1年経ち、バトルスが初めてのリミックス盤を完成させました。オリジナルタイトルは「グロス・ドロップ」。
それをもじって名付けたのがドロスグロップです。注目されているのは、メンバー自身によってディレクションされていることです。リミキサー陣には、ハドソン・モホーク、ギャング・キャング・ダンス、ヤマンタカ・アイはオリジナルに参加しています。
さらにフィールドやコード9、ギ・ボラットなど、気鋭のクエイリターが参加して制作されました。オリジナルとは曲順も異なり、それを通して聞いてみると、そこには「バトルス的美学」を感じさせてくれます。
ドロスグロップには、Wall Street(Gui Boratto Remix)、Sweetie & Shag(The Field Remix)、など全12曲が収録されています。リミックス盤と言っても、単純に既存の曲を編集しただけではありません。
メンバーが選んだそれぞれのアーティストの個性が前面に出ているのが魅力。ヒップホップミュージックやエレクトロミックスなど、あらゆる音楽性を楽しめる作品です。もちろん、根底にはバトルスの美学が光るアルバムです。その中で、日本盤の特典としては、収録曲2曲の、Inchworm(Silent Servant Remix)、Toddler(Kangding Ray Remix)のロング・バージョンがダウンロードできるカードが封入されています。
バトルスはアメリカ・ニューヨーク出身のエクスペリメンタルロック・バンドです。彼らのライブパフォーマンスには定評があり、独特で圧倒的な音楽の波に飲み込まれていきます。現在のメンバーは、デイブ・コノプカ、イアン・ウィリアムス、ジョン、ステニアー。
旧メンバーには、タイヨンダイ・ブラクストンがいましたが、2010年に脱退しています。2007年にはミラード、2011年にはグロス・ドロップといったアルバムをリリース。シングルは2004年にTras 、2007年にAtlas、同じく2007年にTontoを発売。アルバムからのシングル「Atlas」は、高い評価を受けています。そのため、各音楽メディアが発表する年間のベストリストに挙げられました。
タイヨンダイが2009年にソロアルバムの「Central Market」をリリースし、その翌年脱退を表明。残された3人でアルバムを制作し続けています。2011年にはセカンドアルバム「グロス・ドロップ」をリリースした際には、ゲストヴォーカルにゲイリー・ニューマン、マティアス・アグアーヨ、ブロンド・レッドヘッドのカズ・マキノ、ボアダムスの山塚アイを迎えてリリースされました。来日公演は2005年のツアー、2007年、2009年、2011年のツアーがあります。日本でも人気のあるロックバンドです。